想ひ 咲き添ふ
中野 大輔 日本画家作品展
2017年5月24日(水)〜30日(火)
京都大丸店6階美術画廊で 10〜20時 最終日は17時まで
若冲のように緻密、異空間の輝き
日本画家・中野大輔さんが生まれ育ち、現在も画業の拠点としている京都で開く作品展。中野さんは1974年生まれ。叔父が日本画家だったこともあり、日本では最初に設立された画学校、現・銅駝美術工芸高等学校に入学し、19歳で日本表現派展に初入賞した。
当初はサイ、ゾウ、ヘビなどをの大型動物を油絵のように絵の具を厚く盛って描いていた。30歳半ばで大正・昭和の日本画を目にし、改めて日本画の技法を顧みた結果、いきついたのが確かなデッサン力を要する「線」だった。
まず、墨線で輪郭線を骨書きし、岩絵の具で色を埋めていく。ぼかしではなく、輪郭線でモチーフをくっきり描くのは、日本画の一番の技法である「濃淡」を意識しながらもディテールを明らかにするという冒険でもある。
同じく京都で江戸時代中期に活躍した伊藤若冲と、たびたび比べられるのは、画面の余白の使い方の巧妙さと、高いデッサン力にあるように思う。写実と創造を巧みに融合させている、動植物をモチーフにしているという点でも似ている。
若冲は実家のあった京都・錦市場の再興に尽力して、しばらく絵を描かない時があった。現代に生きる中野さんは、いま、ちょうど過渡期にいる。名前が知られるにつれ、さまざまな付き合いも生まれ、筆を持つ時間が減ったり、助言に囲まれたりする。それは「俗」につながる危うさがある。
今回の作品展は、その分水嶺として、流れはどちらに行くのか自分の目で確かめ、確信する場でもある。
©中野大輔 DAISUKE NAKANO 2017