MEMENTO MORI Robert Mapplethorpe Photographs from the Peter Marino Collection presented by CHANEL NEXUS HALL ロバート・メイプルソープ「Tulip」1984年 @Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.
6年目に向かって…
京都を舞台に開催されている「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2017」が大詰めを迎えようとしている。
初年度に、2人の共同創設者/共同代表の志と発案から生まれた写真祭が開催されるという発表を、京都では少しばかりの驚きと戸惑いをもって受け入れられた。まず、日本では欧米と比べて「写真」の文化的なプライオリティが高いとは言えず、受け入れられ方が違う。それが写真家の社会的な地位にも直結している。「わざわざ写真を鑑賞しに出かける」という意欲は、残念ながら絵画に比べて低いと言わざるを得ない。
さらに、京都は景観保持にうるさく、街並みの美しさを過敏に問う土地だ。街頭や寺院に、多くのポスターや旗を貼ったり掲げたりすること自体、受け入れられにくいと言われた。
しかし、小さなうねりは、回を重ねるごとに行政、地元の人や企業、ラグジュリーブランド、有名企業を巻き込んで、パフォーマンス性を高めてきた。「KYOTO」というブランド力もあり、主催者側の発表によれば、昨年までに25万人が訪れたとされている。
わずか5年で「今年も、開催される」と京都人の意識の中に潜在的に入り込んだ写真祭。国内外の有名な作家の貴重な写真作品やコレクションを、京都の寺院、歴史的建造物、ギャラリーなどで展示されている。
新たな試みのめざすものは何か。
それは京都という文化・観光都市のパワーを借りて日本での「写真」の芸術的価値を高めると共に、写真が日常生活の中で普通に傍にあるようなライフスタイルの提案であるように思う。そして、自己に生死、愛を問う時間を持つことへのいざないでもある。
主催側の志の高さ、受け入れ側の本気度を試され続ける写真祭なのだ。
難しいことはどうでもいい。とにかくCOOL!これだけは見ておきたいBEST3
いくら京都が狭いといえども、すべての会場を巡るには時間が足りない、という人に、これだけは見ておいた方がいいのでは、という展覧会&会場を紹介する。
●アーノルド・ニューマン マスタークラス -ポートレートの巨匠- presented by BMW
会場=二条城
二の丸御殿台所・東南隅櫓
Arnold Newman “Masterclass” presented by BMW アーノルド・ニューマン「アンディ・ウォーホル、画家・版画家」ニューヨーク、1973年 © 1973 Arnold Newman / Getty Images 二条城 二の丸御殿台所(会場写真:大島拓也)
リチャード・ギアを発掘し、この世に出したことで知られるハーブ・リッツと並んで、20世紀を代表する肖像写真家のアーノルド・ニューマンの没後初となる国内での回顧展。Life誌やFortune誌のために撮り下ろした有名人やハリウッドスターのモノクロのポートレートが二条城の白壁に映えている。スタジオではなく、生活の場や建物などと共に撮影する「environmental portraits」の旗手だけあって、画面の切り取りが絶妙。中でも同じ写真家のロベール・ドアノー(「パリ市庁舎前のキス」などの作品で日本でも知られている)のポートレートはその技術とセンスが垣間見られる。
●荒木経惟 机上の愛 supported by shu uemura
会場=両足院(建仁寺内)
Nobuyoshi Araki "A Desktop Love" supported by shu uemura 荒木経惟 「机上の愛」2016年 © Nobuyoshi Araki, Courtesy of Taka Ishii Gallery 両足院 ・建仁寺内(会場写真:大島拓也)
愛を通して、常に生と死を撮り続けているアラーキーこと荒木経惟の独壇場。1971年に死に向かう妻・陽子さんとの新婚旅行を写して自費出版した『センチメンタルな旅』は、今、ページを開いても新しくさを感じ、同時に生死と愛への思いを問われる。ヌード、SMなど、ともすれば過激になる被写体だが、今回は机上に何気なく置かれたオブジェが主役。相変わらず温かく、そして哀愁に溢れる作品ばかりだ。6×7のポジフィルム使用のせいか、色調が懐かしい。昨年パリで発表され絶賛された「机上の楽園」を改題し日本初公開。極彩色の数々が、両足院の庭を背景にして展示されて全く違和感なし、という展示テクニックも楽しめる。
●MEMENTO MORI ロバート メイプルソープ写真展 ピーター マリーノ コレクション presented by CHANEL NEXUS HALL
会場=誉田屋源兵衛 竹院の間
MEMENTO MORI ロバート メイプルソープ写真展 ピーター マリーノ コレクション presented by CHANEL NEXUS HALL 誉田屋源兵衛 竹院の間 All Mapplethorpe images © Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.
「メメント・モリ」はラテン語で「死を記憶せよ」と訳される。80年代にニューヨーク社交界の中心的存在だったメイプルソープもエイズで弱る自分の死を見つめながら生き、1989年、42歳で亡くなった。建築家ピーター・マリノのプライベートコレクションから約90点が展示。その様式美ともいうべき作品を堪能できる。